開発者の声(From Sysmex R&D)

試行錯誤を繰り返し、いくつもの壁を越える。すべては癌治療現場の要請に応えるために シスメックス株式会社 中央研究所 中林 一樹

高精度・迅速な検査で癌治療を支えるOSNA。
開発を担当したスタッフに、OSNA誕生までを振り返ってもらいました。

Q1.OSNAとの出会いは?

2000年、シスメックスでは中央研究所の設立と共に、ライフサイエンス分野の研究を開始しました。その研究テーマの一つがOSNAでした。
OSNA法は、リンパ節への癌の転移を検出するシステムです。患者様にリンパ節への転移があるかないかというのは癌の予後因子であり、治療方針を決める重要な要因のひとつです。とても重要な検査なのですが、問題もいくつかありました。それは多くの場合、リンパ節の一部しか検査できないことや検査の手技が難しいこと、病理医の先生の不足によりどこの病院でも検査ができるわけではないなどで、これらの問題を解決する方法としてOSNAのような分子生物学的手法の研究が行われていました。また、乳癌の分野ではセンチネルリンパ節の理論が確立されつつあった時期でもありました。リンパ節を術中に調べるということは、非常に精度と迅速性が求められており迅速に精度よく遺伝子を検出できるOSNAはまさに時代に沿っていたと思います。

現行の検査方法との違い

Q2.OSNAを初めて知った時の印象は?
研究を始めたころに、既に分子生物学的手法によりリンパ節転移を検出するという研究に挑戦している研究者が世界中にたくさんいました。論文も多く発表されていましたが、実際に臨床現場で使えるほどのデータは出ていませんでしたので、やりがいを感じると共にこれは難しい仕事だな、と正直思いました。
Q3.OSNA開発のポイントは?

リンパ節への転移がある患者様とない患者様で、手術の方法が変わるので、手術中に結果を出す必要があります。これを達成するためには簡単に測定に使うサンプルを調製する必要があり、試行錯誤をしながら専用の前処理液を開発しました。

また、装置も簡単に使えるように試薬の調製は全自動で行うシステムを開発しました。あと、最も大切な事なのですが、どのようにしてリンパ節転移のあり、なしを判定するかという点に最も時間をかけました。先に述べたように、論文などはあまりいい結果がでていませんでしたから。

過去の論文などを丹念に調べていくと、当時の論文の多くは遺伝子のありなしで定性的に判定しており、定量的に判定した場合では比較的よい結果が得られていることがわかりました。OSNAのある程度以上の遺伝子があれば陽性、以下であれば陰性という定量的な判定を行うことで、現在の性能が出せるようになっています。

学術データ

Q4.開発に際して苦労した点は?
当時、シスメックスでは病理診断に関する分野の研究は行われていませんでした。ですので、周りのメンバーも癌分野を理解することから始まって大変でした。実験をしても最初は全くいいデータが出ずに、何度も壁にあたってやり直しをしていましたが、共同研究先の先生方に丁寧にご指導いただいたり、励ましていただいたりしながら、根気強く開発を続けて少しずつ改良を重ねました。
Q5.開発者として嬉しかった点は?
やはり臨床の現場で使われていることですね。研究テーマのすべてが世の中に出て患者様の役にたてることは少ないですので、その研究にたずさわれたことは良かったと思っています。
Q6.最後に、今後の目標を教えてください。
今後はOSNA法をより良いシステムに改良していくこと、乳癌だけではなく色々な癌種で使えるように適用を拡大していきたいと思います。また細胞診断にも使えるようなものも研究開発していきたいと思っています。